酔いどれ対談
第9回
"予想の真髄"を語る(後編)
 

 

『競馬は見識が走るもの』
成駿さんの“予想哲学”に揺るぎはない。
しかし山本さん、
“見識”という言葉に、
ある光景を思い浮かべたという。

清水さんの予想哲学は、
競馬というものは、
関係者の見識の競い合いなのだから、
その関係者の立場にたって
“走らせる側の論理”を読み解くことが
鍵だということになりますね。

駿

そういうことですね。

なかなか奥が深いロジックなのですが、
見識を読むというのは、
相当に難しいですね。

駿

だから私のような予想屋が商売として成り立つ。
当たり外れを競うだけなら商売になりませんよ。
“競馬の神様”といわれた大川慶次郎さんですら、
パーフェクト予想は生涯に4回だけです。

4回をたいしたことないと見るのか、
立派だと思うのか…、
私は素晴らしいと思いますが…。


 

駿

そうですね。
でも、9歳で馬主だった父上に連れられて
牝馬のヒサトモが勝った
第6回の日本ダービーを見たのを皮切りに、
もう60年以上も競馬をやってきて、
全レースを見切れたのが4回という話です。
むしろ大川さんが偉かったのは、
当たり外れもそうだけれど、
その高い見識にあったと考えているんですよ。

“競馬の神様”大川さんも、
“カリスマ予想家”清水さんも、
最後は見識こそが
唯一の商売道具という感じですね。
関係者の見識を読むのも
見識がないとできないんですね。

駿

そのとおり(笑)。
さすが山本さんは鋭いね。
まぁ、自分で自分の見識が
どうこういうのもおかしなもんだが(笑)、
ただ研究はしますね。
ひたすら勉強して、研究して、
引き出しをいくつもてるか、
それが勝負だと思いますね。

引き出しですか…。

駿

そう。
私のような評論家もそうだけれど、
調教師にしても騎手にしても同じですよ。
藤澤調教師とか、武豊騎手とか、
優秀な人は引き出しの数からして違う。
そして必要なときに必要な引き出しを
パッと引き出せる勘みたいなものがある。
もう、これは競馬だけ考えててもだめで、
おおげさにいうと、森羅万象につうじていないと
そこまでいけませんね。

そうですね。
ちょっと前にテレビの番組(武豊TV)で
武くんとおしゃべりしたんですが、
いまの自分が新人時代にワープできたら
100勝でも200勝でも
できちゃうと笑っていました(笑)。

駿

そりゃあ、そうでしょう(笑)。
いまの頭脳に若い体力があれば鬼に金棒だ(笑)。
300勝でも400勝でも当たり前ですよ(笑)。

それが引き出しの数の力ということなんですね。

駿

そうだと思います。
これは才能がいくらあっても蓄積できません。
研究であり、勉強しかないんです。
そうして自分の見識というものが鍛えられて、
他人の見識が見えるようになる。
読めるようになるんです。

もう、ほとんど学ぶということに近いですね。

駿

そうですね。
私は酒も飲むし、博打も打つし、
人からは無頼のヤカラと思われています(笑)。
でもね、どこにいようと
学ぶ姿勢は忘れちゃいけないね。
まぁ、私にとっては酒も博打も師匠というか、
いろいろと学ばせてもらっています(笑)。

私が競馬に興味を持って、
競走馬のオーナーになろうと決めたのも、
いろいろな人からさまざまなことを
学ばせてもらったことが大きく影響していますね。

駿

ホーッ、それはどういうことですか。

 

(あしたにつづく)

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