酔いどれ対談
第24回
ホースマン藤澤和雄師を語る(2)
 

 

『伯楽の一顧を得る』
名伯楽が一度見て、もう一度振り返るだけで
馬の値段が跳ね上がるという中国の故事ですね。
さて、藤澤伯楽の伝説とは…?

駿

それはどんな伝説なんですか?

たとえば日高には、
藤澤幽霊伝説みたいなものがあるらしい。
それほど姿を見ることがない(笑)。

駿

藤澤さんは牧場を見に行かないですか?

藤澤先生は私がお会いした当時、
10年連続でリーディングトレーナー(最高勝数)の
座をひとり占めにしていたわけです。
そのほかにも勝率、賞金獲得額、調教技術の各部門が
JRAの調教師表彰に定められています。
大相撲にたとえると、リーディングトレーナーが優勝で、
あとは殊勲賞、敢闘賞、技能賞みたいなことでしょうか。
先生はそのほとんどに例年ように名を連ねていました。


 

駿

そう、ぶっちりぎでしたからね。
藤澤の馬には勝てないと、
みんな心の中で思っていました。

そういう実績があるから、
馬主さんのほうから良血は当たり前で、
その上に惚れ惚れするような姿かたちを持った馬を
預託してくるわけです。だからといって、
そうした馬がみんな走るかといったら、
それはそれで難しい問題なんですが…。

駿

とりあえず、わざわざ自分で
日高まで出かける必要がなかった(笑)。

5年に1度、姿を現すくらいだって(笑)、
だから藤澤を日高で見かけたら凄いことだって
伝説なんだそうです。

駿

まさに幽霊並みですね(笑)。

まあ、本当はそんなことはないと思うんですよ。
これでいいとゴールをつくらない人ですから、
実際には足を運んでいたはずです。
“門前市を成す”という感じで藤澤先生に預けたいと
思っていらっしゃる馬主さんが
それくらい多かったという事実が、
そういう形で伝説化されたんだと思いますね。

駿

中国に『伯楽の一顧を得る』という故事があります。
馬がいっこうに売れないので困った男が、
名人と評判の高い伯楽に頼んで、
その馬をじっと見てもらい立ち去り際に
一度振り返ってもらったところ、
それだけでその馬の値が10倍になったという話です。
現代風にいえばプロモーションの勝利、
ブランドづくりの奥義ですよ。
藤澤調教師ほどの人だと
こうした宣伝に利用されかねない。
それでわざと足を遠のけていた、
行っても目立たないようにしていた、
ということなんでしょうね。

そうですね。そうした見識というか、
目配りにもすぐれた感性をお持ちですからね。

 

(あしたにつづく)

酔いどれ対談バックナンバー
最終回
余暇の時代、そして競馬(8)
第39回
余暇の時代、そして競馬(7)
第38回
余暇の時代、そして競馬(6)
第37回
余暇の時代、そして競馬(5)
第36回
余暇の時代、そして競馬(4)
第35回
余暇の時代、そして競馬(3)
第34回
余暇の時代、そして競馬(2)
第33回
余暇の時代、そして競馬(1)
第32回
ホースマン藤澤和雄師を語る(10)
第31回
ホースマン藤澤和雄師を語る(9)
第30回
ホースマン藤澤和雄師を語る(8)
第29回
ホースマン藤澤和雄師を語る(7)
第28回
ホースマン藤澤和雄師を語る(6)
第27回
ホースマン藤澤和雄師を語る(5)
第26回
ホースマン藤澤和雄師を語る(4)
第25回
ホースマン藤澤和雄師を語る(3)
第24回
ホースマン藤澤和雄師を語る(2)
第23回
ホースマン藤澤和雄師を語る(1)
第22回
ロンシャンに架ける夢(番外編)
第21回
ロンシャンに架ける夢(後編)
第20回
ロンシャンに架ける夢(中編)
第19回
ロンシャンに架ける夢(前編)
第18回
世界は見えてきたか(番外編/下)
第17回
世界は見えてきたか(番外編/中)
第16回
世界は見えてきたか(番外編/上)
第15回
世界は見えてきたか(後編)
第14回
世界は見えてきたか(中編)
第13回
世界は見えてきたか(前編)
第12回
世界にまなび世界をめざす(後編)
第11回
世界にまなび世界をめざす(中編)
第10回
世界にまなび世界をめざす(前編)
第9回
"予想の真髄"を語る(後編)
第8回
"予想の真髄"を語る(中編)
第7回
"予想の真髄"を語る(前編)
第6回
日本で走らせる理由
第5回
サドラーズウェルズにこだわった理由
第4回
ミスターケビンに教えられたこと
第3回
砂漠に落としたイヤリングをさがす
第2回
海外挑戦には"世界仕様"の馬が先決
第1回
藤澤"諸葛孔明"に"三顧の礼"のお願い
序章
カジノドライヴ特別編