酔いどれ対談
第38回
余暇の時代、そして競馬(6)
 

 

くう ねる あそぶ
レジャーが飯を食うことや眠ることと同じように
大切にされる時代がやってきた

駿

考えてみると山本さん、
人間ってのは、つくづく業の深い生きものですな。
食うや食わずの時代があったかと思えば、
とりあえず食えても
働きづめに働かせられたときもあった。
ところが、今度はレジャーだという。
どこまでいっても欲の深い存在です。

ええ、そう思いますね。
でも歴史って、ある意味では
欲の流れみたいなものですね。
これは良い悪いじゃない。
食べたいという欲、
これが狩猟や農業を発展させてきたのは
間違いがない。
いろいろな道具や仕組みを発明させた。
病気で死にたくないという切実な願いが、
学問や医療技術を発達させた原動力になった。
先ほどの洗濯機や掃除機も
そうした産物のひとつですね。
こうして見てくると、
歴史は人間の欲がつくってきた
といえる側面もあるように思います。


 

駿

そういうことなんだろうね。
で、いま人間の欲は余暇に向かっている。
濃密で充実した余暇の時間をすごすことが、
現代人の最大の欲望になりつつある、と。

そんな気がしています。
私が尊敬する友人の糸井重里さんは、
そういう時代の空気を『くう ねる あそぶ』、
たった1行のキャッチコピーに凝縮してくれました。
食うこと、寝ること、本能ですね、
遊ぶことにはそれと同じ価値があるんだ、と。

駿

それは凄い言葉ですね。
ま、私の人生なんてのは、
食う、寝る、遊ぶ、以上ですものね(笑)。
遊ぶことにかけては自信がありますよ(笑)。

清水さんは時代の先をいっていらっしゃる(笑)。

駿

話が脱線してしまいましたが、
食欲や性欲と並ぶ新しい欲というか本能である遊び、
これをどういう具合に人間の営みとして取り込んでいくか、
山本さんはそういうお仕事をやってらしたわけですね。

そうですね。
世の中の人々のニーズというか、欲ですね。
欲のあり方とか、
その動き方とかをずっと勉強してきました。
人間の根源的な欲とつながらないと
ビジネスとしては成功しにくいですからね。
というよりも、そもそも事業として
社会的意義が薄いだろうと考えたんです。

駿なるほど。
そこまで考えた上での余暇ビジネスなんだ。
 

(あしたにつづく)

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