酔いどれ対談
第28回
ホースマン藤澤和雄師を語る(6)
 

 

カジノ不在のレースを観るのは嫌だといい、
次に発走直前、翻意し『やっぱり観る』
と言い出した藤澤調教師。
師がレース中にとった奇抜な行動とは…?

スタートして最初のコーナーをカーブした時でした。
藤澤調教師がいきなり
『ケント(デザーモ騎手=当時ビッグブラウンに騎乗)、
やめろ!』って叫んだんです。
私は意味が分からなかったですよ。
結果的にビッグブラウンは最後方でノロノロと
ゴールインした(主催者発表は競走中止)のですが、
『おかしい?!』といち早く見抜いたのが
藤澤先生だったんです。

駿

さすがだね。みているところが違う。


 

でもね、藤澤先生が『やめろ!』って叫んだのは
それだけではなかった。向こう正面でも
ずっと『ケント、やめてくれ!』って
叫びつづけている。それどころかしまいには
『とめろ~!』『やめてくれ~っ!』と
いいながら泣き出したんです。
私は最初、理解できなかった。
『変な男を雇っちゃったか?』って思いました。
だって、ビッグブラウンの調教師は
我々のことをボロクソに言っていたんですよ。
『わざわざ日本から何をしにきたのか分からない』
とまでいっていた。ところが自分は
無理して出走させたがために、競走中止になった。
私は孔子じゃないから内心『そらみたことか?!』
って思ってしまいました。いや、これは本音ですよ。
でもね、藤澤先生は違った。
相手の調教師がどんな人間性だろうと、
馬には関係ないと思っていたのでしょう。
根っからの馬好きなんだと思い知らされました。

駿

さすがだね。藤澤調教師はやっぱり
本当のホースマンなんでしょう。

ビッグブラウンの故障をみて、
藤澤先生はパニックになった。
そして、私はそんな変な親父をみて
パニックになった(笑)。

駿

ベルモントSの最中にそんな裏話があったんですね。
それにしても藤澤調教師にとっては
誰がオーナーだとか調教師だとか、
何のためにニューヨークまで行ったのか?
とか、そういうことは関係なかったんだろうなぁ…。
一ホースマンとして純粋な気持ちでレースを観ていた。
だからそういう行動になったんでしょう。
やっぱり彼は正真正銘のホースマンなんですよ。

 

(あしたにつづく)

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