海の向こうの競馬、そしてホースマン

第24回
日本のうるさい馬たちを大人しくさせるヨーロッパ独特の空気
 

「日本の競馬ファンには、
 広大な原っぱを利用して、
 3千頭もの馬たちが調教を積んでいる
 イギリスのニューマーケット
 ―その中心にあるニューマーケット競馬場では
 毎年5月に英1000ギニー、
 英2000ギニーが行なわれています―、
 仏ダービー、仏オークスを開催する
 シャンティ競馬場を中心に
 いくつかの調教場が点在している
 シャンティの森といった、
 ヨーロッパの調教施設も
 是非見てきて欲しいですね」

合田さんによれば、
こういった調教施設こそ、
日本とヨーロッパの競馬文化の違いを感じるのに
最適な場所だそうです。

「まさに馬と人間が自然のなかで共生しているのが、
 ニューマーケットであり、
 シャンティなんですね」

「人為的であったり、
 人工的であったりというのでなく、
 長い歴史と伝統が培った
 自然のエネルギーが満ちている場所というのか、
 日本のトレセンや牧場とは、
 “空気そのものが違う”印象すら受けます。
 実際、その“空気”は馬も感じるみたいで、
 たとえば、
 アグネスワールドやシーキングザパールという、
 日本では“うるさくて、
 うるさくてしょうがない馬”たちでも、
 ヨーロッパに来ると心からリラックスできるのか、
 本当に大人しくなるんですね」

「あのいつも闘志を表に出すディープインパクトでさえ、
 フランスでは、
 実に穏やかな表情をしていました。
 たぶんヨーロッパを初めて訪れた競馬ファンの方でも、
 ニューマーケットやシャンティに漂う独特の空気は、
 すぐに感じ取られるのではないでしょうか」

(第25回に続く)

構成・文/関口隆哉

 

合田直弘氏 プロフィール

1959年東京生まれ。慶応普通部(中学)時代から馬術部に所属するかたわら、千葉新田牧場で「乗り役」としてのアルバイトをこなす。慶応大学経済学部卒業後、1982年テレビ東京に入社。『土曜競馬中継』の制作に携る。1988年テレビ東京を退職し、内外の競馬に関する数多くの業務をこなす(有)リージェントの設立に参加。
現在は、『世界の競馬』(NHK-BS)、『鈴木淑子のレーシングワールド』(グリーンチャンネル)などのキャスターも務めている。

 

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