海の向こうの競馬、そしてホースマン

第6回
心に深く刻まれた名馬たち<2>-奇跡の馬ラムタラ(2)
 

“奇跡の馬”ラムタラについて語る合田さんの口調は、
さらに熱を帯びてきます。

「スウィンバーン騎手が手綱を取るラムタラは、
 なんとか英ダービーに間に合う。
 とはいえ、2歳8月のデビュー戦以来の出走ですから、
 常識的に考えれば、厳しい状況ですよね。
 それでもラムタラは6番人気に推されました」

「ぼく自身もそうですが、
 スコット師とスウィンバーン騎手の
 エピソードを知っている競馬ファンは、
 競馬的な常識を超えた部分で、
 ラムタラを応援していたのではないでしょうか」

「そして、英ダービー本番。
 直線入り口では、
 苦しい位置に押し込まれていたラムタラですが、
 ゴールが近づくに連れ、
 1完歩ごとに末脚を伸ばしてくる。
 まるで、スウィンバーン騎手とラムタラのコンビを
 スコット師の霊が後押ししているかのような追い込み。
 ついに先頭を捉え、
 トップでゴール板を駆け抜けたラムタラですが、
 実際スウィンバーン騎手は、
 レース後にこんなコメントを残しているのです」

「“ラムタラとぼくが止まりそうになったとき、
 スコットがぼくらの背を押してくれたんだ!”」

ラムタラのドラマチックなエピソードを
一気に語ってくれた合田さん。
最後に、こんなコメントを付け加えました。

「この話、イベントや講演会でもよくするのですが、
 けっこう“鉄板”なんですよね(笑)」

さて、次回はNHK-BSで放映されている
長寿番組『世界の競馬』にまつわる裏話を
番組の解説者である合田さんに伺います。

(第7回に続く)

構成・文/関口隆哉

 

合田直弘氏 プロフィール

1959年東京生まれ。慶応普通部(中学)時代から馬術部に所属するかたわら、千葉新田牧場で「乗り役」としてのアルバイトをこなす。慶応大学経済学部卒業後、1982年テレビ東京に入社。『土曜競馬中継』の制作に携る。1988年テレビ東京を退職し、内外の競馬に関する数多くの業務をこなす(有)リージェントの設立に参加。
現在は、『世界の競馬』(NHK-BS)、『鈴木淑子のレーシングワールド』(グリーンチャンネル)などのキャスターも務めている。