海の向こうの競馬、そしてホースマン

第2回
リードポニーが導いたニューアプローチの英ダービー制覇(2)
 

ニューアプローチを管理する
ジム・ボルジャー調教師が主催者側に要請した、
リードポニーを本馬場まで帯同させることですが、
それはヨーロッパ競馬における
過去の長い歴史を覆すことでもありました。

「アメリカでは一般的なリードポニーですが、
 欧州では本馬場に入場できるのは出走馬と誘導馬だけ。
 出走馬を落ち着かせる効果があるリードポニーは、
 存在そのものが認められていなかったのです」

「それでもボルジャー調教師は粘り強く、
 主催者側との交渉を続けていきました。
 その粘り腰が効を奏し、
 ついにニューマーケット競馬場の主催者が、
 ニューアプローチにリードポニーを付けることを
 認めたのです」

「そしてこの決定は、ダービーが行なわれる
 エプソム競馬場にも引き継がれました。
 史上初めてエプソム競馬場の本馬場に入った
 リードポニーに導かれ、出走地点へ無事到着した
 ニューアプローチは、鮮やかな追い込みを見せて、
 英ダービー馬の栄誉に浴したわけです」

それにしても、長年のルールを改めることに、
ニューアプローチのライバル陣営からの
抵抗はなかったのでしようか。

「それがなかったのですね。
 ボルジャー調教師の人徳もあるのでしょうが、
 人間としての大きさというか、
 寛容の精神といったものを、
 向こうの競馬関係者は強く持っているのかもしれません。
 まさに2008年英ダービー馬は、馬名通りの、
 “新しいアプローチ”によって誕生したわけです」

最後は微妙に上手いコメントで締めくくった合田さん。
次回からは、合田さんの心に深く刻まれた、
「欧州、思い出の名馬たち」について
語っていただきます。

(第3回へ続く)

構成・文/関口隆哉

 

合田直弘氏 プロフィール

1959年東京生まれ。慶応普通部(中学)時代から馬術部に所属するかたわら、千葉新田牧場で「乗り役」としてのアルバイトをこなす。慶応大学経済学部卒業後、1982年テレビ東京に入社。『土曜競馬中継』の制作に携る。1988年テレビ東京を退職し、内外の競馬に関する数多くの業務をこなす(有)リージェントの設立に参加。
現在は、『世界の競馬』(NHK-BS)、『鈴木淑子のレーシングワールド』(グリーンチャンネル)などのキャスターも務めている。