海の向こうの競馬、そしてホースマン

第27回
馬のイライラを未然に防ぐ欧州厩舎の立地条件
 

昨日、合田さんが紹介してくれたエピソードのように、
日本では、人と馬が接するとき、
神経質なまでに手をかけすぎる傾向が
あるのは事実でしょう。

一方、馬の個性を尊重しながら、
とにかく自然に振舞うことが大切だと、
ヨーロッパのホースマンは
本能的に理解しているようです。
確かに、余分なストレスを
人も馬も感じなくて済むためには、
お互いに肩肘張らない関係を築き上げることは、
極めて重要なのかもしれません。

もうひとつ、
馬たちが日常生活を送る厩舎の環境の違いも、
馬たちの気性に影響を与えているのでは、
と合田さんは分析します



「これは馬の扱い方云々ではないのですが、
 ヨーロッパの厩舎の立地条件というのも、
 欧州の馬たちの大らかな気性に
 結びついていると思いますね」

「向こうの厩舎って、
 調教馬場に到着するまで、
 30分くらいかかるのが当たり前なんです。
 その道程が、行きはウォームアップに、
 帰りはクールダウンに繋がっていく」

「トレセンという限られた場所に立ち並ぶ、
 日本の厩舎の立地条件では望みようもない、
 欧州では自然な形で成される、
 念入りなウォームアップやクールダウンが、
 馬たちのイライラを未然に取り除いている面は、
 間違いなくありますよね」

(第28回に続く)

構成・文/関口隆哉

 

合田直弘氏 プロフィール

1959年東京生まれ。慶応普通部(中学)時代から馬術部に所属するかたわら、千葉新田牧場で「乗り役」としてのアルバイトをこなす。慶応大学経済学部卒業後、1982年テレビ東京に入社。『土曜競馬中継』の制作に携る。1988年テレビ東京を退職し、内外の競馬に関する数多くの業務をこなす(有)リージェントの設立に参加。
現在は、『世界の競馬』(NHK-BS)、『鈴木淑子のレーシングワールド』(グリーンチャンネル)などのキャスターも務めている。