知恵の言葉

正直ものの"ヘンタ買い"(後編)

なぜかというと競馬サークルとは運命共同体だから、
「お説ごもっとも」で引きさがっても、なんの痛みも感じないのだ。
かわいそうなのは、スポーツ紙や夕刊紙の記者。
記者としてはあたりまえなのだが、
“スクープ”という感覚で
ヤバい話をオフレコで書いてしまったりする。
これで出入り禁止になる記者が、案外多いのである。
実際、ミスターシービーの報道パニック以来、
新聞に載せるコメントは、調教師や責任のある助手、
騎手といった人たちに限られる傾向になってきた。
そして、実際に馬の世話をする厩務員のコメントはオミットされだした。
馬主やファンに影響大という理由からである。
逆にいえば、こうした厩務員は本当のことをいうのではないか、と思えるが、
悲しいかな、この人たちは自分の馬を近視眼的にしか見られない。
サークル内での横の連絡がないのだ。
そんなところから、厩務員のコメントを面白おかしく書いて載せる新聞もあるが、
マユツバなものが多い。
同じコメントでも、冒頭にふれた後者のほう、
一般に「調教メモ」といわれる調教担当者のコメントはどうか---。
これも千差万別だが、主観による判断だから担当者の“目”しだいということになる。
スポーツ紙の場合、記者は兼任が多く、一部をのぞいて専任者の数は少ない。
したがって、専門紙のほうがいくらかマシといえる。
だが、トラックマンとはいっても、騎乗経験のある人はほとんどいない。
競馬が好きでこの道に入り、調教スタンドでストップウォッチを押している、
ただそれだけの人たちではあるのだが、しかしこれでメシを食っているのだ。
そのうち道は開けてくる。
動きの良し悪し、状態の把握などはベテランになればできるようになる。
そうなるには、最低10年は必要ではあるが・・・。
デキのわるいトラックマンは、時計が速い=動きがいい=絶好調、となる。
こんなのは、なにも朝早くから取材しなくても、タイムだけ見れば書けるというものだ。
いいトラックマンを見つけるコツは、遅い時計の馬に対する評価である。
「遅くていいんだ」が好結果に結びつくということは、
経験とともに“目”のたしかさがある証拠なのだ。

・・・次回は火曜日の
更新となります。お楽しみに!

東邦出版発行『知って得する競馬の金言』より
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