知恵の言葉

調教時計はラップで読め(後編)

調教タイムは、陸上競技や水泳のようにストップウォッチではかる。
しかし、他の競技と根本的に異なる点は、
スタート地点が明確ではなく、そのうえ一斉スタートでもないことだ。
トラックマンは、200mごとのハロン棒でストップウォッチを押し、
14秒5-28秒5-41秒5などとメモしていく。
新聞に掲載されるのは、これを逆表記したものである。
そして、その見方だが、“引き算”で見る。
こうすると、200mごとのタイムがわかり、「ラップ表」ができあがる。
さらに、これを分析すると、
最初とばして最後にバテたとか、
ゆっくりいったから終い速くなったとか、
イーブンペースだったとかがわかってくる。
多くのファンは「上がり3ハロン」に注目する。
数年前から「終い1ハロン」も掲載されるようになったが、そこへ目がいく。
「終わりよければすべて良し」というわけで、
いかにも日本的な発想だが、これはおおむね正しい。
最後にバテバテになる馬は完璧ではないと考えられるからである。
しかし、それがすべてではない。
ここが、“ラップ分析”の妙なのである。
でだしを15~13でいった馬と、13~12でいった馬とでは、
当然、最後の脚いろはちがう。
われわれ人間だって、最初にとばせば、最後はバテてくる。
とはいえ、調教はあくまで調教で、本番ではない。
終いだけを重視すると、痛い目にあったりするのだ。
前が速いか、後ろが速いかは、
馬の脚質などで変化することもあるのである。
同時に、どこから追ったかということも問題になってくる。
長めから追ったか、短めに追ったか、だ。
7F、6F、5Fと距離が短くなればなるほどタイムが速くなるからだ。
単走か、併せ馬か。
これも問題になってくるが、単走でタイムが速いのがベストである。
さらに、コースも問題だ。
美浦には、まず南北があり、しかもその中に何本かのコースがある。
南D、北Cがメインコースだが、
両コースは幅員が広く、走りやすいためタイムが速くなる。
逆に、内側にある南B、Aや北Bは小回りのためタイムがかかる。
ついでに、もうひとつ。
馬場のどこを通ったかもポイントになる。
このコース取りを新聞では、(1)~(7)の数字で表記したりするが、
広いコースの場合、広い本コースの場合、
内ラチぴったりと大外では約80mも距離が違ってくるのだ。
栗東もほぼ同様だが、ここには「坂路コース」がある。
そして、このコースは、調教スタンドからは見えない。
発表されるタイムは、JRA開発のバーコードによる計示だが、
坂路ゆえに速いタイムは好調のバロメーターと、
いまのところはいえそうな結果がでている。

・・・次回は金曜日に更新します!

東邦出版発行『知って得する競馬の金言』より
HPへはこちらからどうぞ!