1980年代後半、いわゆる 「バブル時代」 の若者たちは、
カッコいい車に乗ることに、一種のステイタスを見い出していました。
そのなかで、憧れの存在となっていたのが、
ターボエンジンを搭載したスポーツタイプの車。
スピード能力に優れたターボ車を駆り、
夜の首都高速を女の子とドライブというのは、
かなり通俗的ではありますが、当時の男の子たちの夢のひとつだったのです。
ターボエンジンを搭載したスポーツカーのなかには、エンジンがふたつ、
つまり “ツインターボ” というシステムを採用していた高級車がありました。
ポルシェ911やメルセデスベンツSLクラスなどが、
それに当てはまる外車だったのですが、
さすがに値段が凄まじく、フツーの青年たちには、
とても手が届かない、高嶺の花でもありました。
さて、バブルの時代が終焉を迎えかけていた1990年代前半、
競馬の世界に、その名もズバリ、ツインターボ “Twin Turbo” という
競走馬が登場してきました。
おそらく、このツインターボという馬名は、
母馬レーシングジイーンからの連想かと思われますが、
そのレース振りは、まさに “名は体をあらわす” ものでした。
ゲートが開いたと同時に、エンジン全開でブンブンと飛ばしていく。
デビューから引退するまで、このスタイルを貫き通したツインターボは、
数多くの競馬ファンに愛される、超個性派ランナーとなったのです。
ツインターボの面目躍如の一戦となったのが、1993年のG3オールカマー。
中館英二騎手を鞍上にしたツインターボは、スタート直後から飛び出すと、
最初のホームストレッチで、後続に5馬身の差を付けてしまいます。
向こう正面に入り、さらに勢いを増したツインターボは、
どんどん後続との差を広げていきます。
ターフビジョンに映る、ツインターボの気風の良い逃げに、
中山競馬場に詰め掛けたファンたちも、熱い声援で応えます。
異様な熱気のなか、10馬身近いリードを保ったツインターボが直線へ。
公営大井からやって来たハシルショウグン、ともにG1ウイナーである、
1、2番人気に推されていたライスシャワー、シスタートウショウらが
追い上げてきますが、すでに勝敗は決していました。
結局、2着ハシルショウグンに5馬身差を付けて、
ツインターボが、前走G3七夕賞に続く、重賞連覇を達成したのです。
現役引退後、種牡馬入りしたツインターボですが、
わずか5頭の産駒を残しただけで、11歳1月に急死。
現在、その血を受け継ぐサラブレッドは、いなくなってしまいました。
また、ツインターボエンシンを搭載したスポーツカーも、
ガソリンの大量消費を許さない、このエコの時代には、
かなり形勢が悪くなっています。
あるいは、超個性派競走馬ツインターボも、
若者のツインターボエンジン車人気も、
時代の要請とともに誕生し、
時代の趨勢とともに消えていったのかもしれません。
(次回は9月28の水曜日にお届けします) 構成・文/関口隆哉