合田直弘氏インタビュー 海の向こうの競馬6 そしてホースマン

12月13日(日)、香港シャンティン競馬場で、世界各地から競合が集う香港国際競馬が開催されます。
第15回
状況を一変させるかもしれない、種牡馬ディープインパクト

現在の世界の競馬界を見渡してみると、
スプリンター戦線は、
オセアニアと、そこで生産された馬たちが大部分を占める香港、
芝のマイル~中長距離戦についてはヨーロッパ、
そしてパワフルなスピードが求められるダート戦はアメリカという
勢力分布図が、完全に出来上がっているようです。

こういった、生産馬の傾向が固定化しているなか、
日本馬、あるいは日本の競馬は、
どのように、世界のなかで存在感を示すべきなのでしょうか?

「2001年の香港国際競走で、マイルをエイシンプレストン、
  ヴァーズをステイゴールド、カップをアグネスデジタルと、
  日本馬が3連勝してから、もう10年近い歳月が流れている。
  はっきり言ってしまえば、日本馬の実力は、
  そのときよりも落ちているのではないでしょうか」

日本馬の実力低下の要因を、合田さんは、
次のように説明してくれました。

「サンデーサイレンスという、世界的に見ても、
  突出した能力を持っていた種牡馬がいなくなってしまったこと、
  さらに、日本の国力、経済力の落ち込みも、
  日本競馬の低迷に大きな影響を及ぼしていますよね。
  実際、海外から高額の種牡馬や繁殖牝馬を導入することが、
  非常に難しくなってきている。
  “血の更新” を怠ると、現在だけでなく、
  20年後、30年後に響いてしまうことも、非常に怖いところです」

「でも、希望はあります」、そう言い切った合田さんが続けます。

「2010年からデビューするディープインパクト産駒たちが、
  日本競馬復興の鍵となる気がしています。
  一頭の種牡馬が、すべての状況を一変させてしまうことを、
  すでにわれわれはサンデーサイレンスで経験している。
  そのSS最強産駒である、ディープインパクトは、
  能力的にも、父と同じことができるかもしれません。
  実際、1歳後半を迎えたディープインパクト初年度産駒に対して、
  とても高い評価が、数多くの競馬関係者から与えられています。
  まあ、SS系種牡馬が過剰に存在する状況で、
  ディープインパクト一頭に、過度の期待を懸けるのは、
  あまりに酷なことかもしれないのですが…」

明日は、いよいよ最終回。
日本競馬をより良くするための、合田さんからの提言です。

(明日更新の最終回に続く)


構成・文/関口隆哉




1959年東京生まれ。慶應中学時代から馬術部に所属するかたわら、千葉新田牧場で「乗り役」としてのアルバイトをこなす。慶應大学経済学部卒業後、1982年テレビ東京に入社。『土曜競馬中継』の制作に携る。1988年テレビ東京を退職し、内外の競馬に関する数多くの業務をこなす(有)リージェントの設立に参加。
現在は、『世界の競馬』(NHK-BS)、『鈴木淑子のレーシングワールド』(グリーンチャンネル)などのキャスターも務めている。