馬券術どおりに買ったら、こうなった。

まさかの13番人気、大的中

「驚いたね」

これは将棋の中原誠十六世名人が
よく口にする言葉なのだが、
先週の飛騨S、
我ながらまさに「驚いたね」という結果だった。

予想で挙げたメジロシリングは当日13番人気。
スタートも甘く
「いきなりやらかしたか……」と思ったものの、
行き脚がついてからは
引っ張りきれないほどの手応えを見せている。
そして、手応えどおりに、
3コーナーを過ぎると馬群の外を通って
グングンと進出してくるではないか。
その勢いは直線を向いても衰えず、
なんと全馬を差しきってしまったのだった。



単勝3450円。
1000円しか獲れなかったのが
自信のなさの現れではあるのだが、
それでも私には十分すぎる。

配当をよくよく見ると、馬単が10万9190円。
総流し17点で買ったとしても
単勝より圧倒的に効率が良かったわけで、
このあたりが詰めの甘さというか、
実に冴えないところではあった。
まあ、単複派の宿命だと受け入れるしかない。

実は、メジロシリング本命の理由は、
先週書いた叩き2戦目やコース実績のほかにも
いろいろとあった。
ならば先に言えと猛ツッコミされそうだが、
散々能書きを垂れてハズしたらと思いましてね……。

理由のひとつが、父のロドリゴデトリアーノ。
もともとローカル小回りには強い血だし、
この中京1200mでも
ゴールデンロドリゴが何度か穴をあけたことを
覚えている方は多いはずだ。

また、開催3週目の中京といえば、
外差しが決まってもおかしくないころ。
飛騨Sでは先行馬や内枠の馬が
上位人気になりそうだったこともあり、
「展開次第では差し・追い込みに妙味アリ」
と考えた。
そして、差し・追い込み馬のなかで
好材料が揃っていたのが
メジロシリングだったというわけだ。

と、たまの的中で必要以上に饒舌になるのが、
いかにも馬券下手らしいところ。
偶然の的中に驕らず、
この夏は「にわか千二ウォッチャー」となって
今後も的中を目指していく所存であります。

メジロシリングを推したときに
「外差し」が重要なファクターだったように、
展開の影響が大きい千二では
枠順を見ずに予想することは不可能に近い。

金曜更新という都合上、
枠順のわかる土曜日のレースが
どうしても予想の中心になってしまうのだが、
今週は日曜に千二重賞のCBC賞が組まれている。
もちろん重賞なので金曜の段階で枠順が確定済み。
今週はこのレースを予想していこう。

土方氏によると、
CBC賞のように
「中京芝1200mでクラスが1000万上以上」の場合、
・追い込みが決まりやすい
・後方待機同士の決着が多い
・速い上がりの実績がある差し馬が有利
というのが、好走の条件となる。

一方、「500万下以下」の場合は、
・先行馬が安定
・意外に逃げ馬苦戦
・速い上がりの実績必要
となっている。

これは6年ほど前の著書からの引用なのだが、
現在でも事情はそう変わっていないように思われるし、
差し馬が有利なのは先週のメジロシリングが……
って、いい加減しつこいですか。

いずれの場合にも共通するのは、
「速い上がりの実績が必要」
ということ。
逆に、有利な脚質は
クラスによって異なることがわかる。

おそらくこれは、
下のクラスほど流れが遅いために
先行馬が残りやすく、
クラスが上がれば流れも速くなるため、
後方待機の差し馬に出番が回ってくる
ということを意味しているのだろう。

このあたりを踏まえて、
狙うのはやはり人気のない馬だ。
土方氏も
「とにかく1番人気は信用できない」
が、このコースでの口癖だという。

CBC賞の出走18頭、
といっても、検討の対象になるのは
外枠だけの差し馬、そして人気薄なので、
自然と限られてくる。

目にとまったのがプレミアムボックス。
昨年のオーシャンSを勝って以降は不振だが、
近2走は復調の兆しがなくもない。
特に2走前の春雷Sは
上がり34秒3の前残りの流れのなか、
後方から0秒3差まで詰めて5着。
上がりの速いレースへの対応力も十分に備えている。

近年のCBC賞では
先行馬が好成績を残しているのが気にはなるし、
アタマまで突き抜けるほどの力があるとも思えないが、
複勝圏内なら十分に狙えるはずだ。


冒頭に挙げた、
中原十六世名人の口癖である「驚いたね」。
有名な口癖なので、
「驚いたね」と言っても、
まわりは驚かないそうだが、
あるとき、
「名人が本当に驚いたときは、なんと言うのですか?」
と尋ねられたらしい。

その答えは……、
「そういうときは、本当に驚いたね、だね」
だったそうだ。

私も2週連続的中で、
「本当に驚いたね」
といきたいところである。

自分では予想しないほうが、当たるのでは…
出川塁(でがわ・るい)

1977年熊本県生まれ。出版社2社で競馬専門誌、競馬書籍の編集に携わり、2007年からフリーライターに。『競馬最強の法則』『サラブレ』を中心に寄稿。得意ジャンルはデータ解析。メインとする競馬のほか、サッカーでも活動中。

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