馬券術どおりに買ったら、こうなった。

中山芝1200mはダート血統が狙い目、なのだけど

先週は体調不良で休載してしまい、
大変申し訳ありませんでした。

その埋め合わせになるかどうかわかりませんが、
今週は土曜中山で芝1200mの特別レースが
2鞍組まれていることもあり、
2レースを予想したいと思います。

私は血統が好きで、
競馬雑誌でも血統を絡めた馬券術の
構成を担当することも結構あるし、
馬券でも参考にすることが多い。
とはいっても、
血統だけで簡単に的中するかというと、
そんなことはないのは
みなさんもご存じのとおりだろう。

今は亡き大種牡馬
サンデーサイレンスの産駒であっても、
中央競馬でデビューした産駒のうち
3割以上は1勝もできずに登録を抹消されている。
現在、サンデーの仔で種牡馬として
もっとも大きな成功を収めているアグネスタキオンでも、
産駒の半分は未勝利馬である。

だから、
「○○の産駒だから強い」
とは考えてはいけない。
馬の強さが血統で決まるわけではないのは、
同じ父と母から生まれた全兄弟でも
かたやGⅠ馬、こなた未勝利馬という例が
枚挙にいとまがないあることが証明している。

ただし、
血によって受け継がれる特徴や個性は確実に存在する。
リアルシャダイの産駒たちは
長距離戦で抜群の強さをみせたし、
サンデーサイレンスの産駒たちは
圧倒的な瞬発力で他馬をなで切った。
こうした特徴のことを
どんなレースや条件が得意かという
「適性」と言い換えてもいいだろう。

かつて、トニービンの産駒が東京で強いことは
血統好きでなくとも常識だった。
今年の目黒記念で
雨足が強くなってドロンコ馬場になるにつれて
ミヤビランベリがどんどんオッズを下げていったのも、
オペラハウスの産駒が道悪を苦にしないことを
多くの人が知っていたからだろう。

もっと細かく、コースごとに
向いた血統、向かない血統もある。
そして、今週予想する中山芝1200mというコースは、
「ダート向きの血統が強い」
という特徴が明確に出ているのである。

ここは血統を解説するところではないので、
ダート向きの血統について
詳しく触れることは避けるが、
ミスタープロスペクター系や
デピュティミニスター系といった
アメリカで実績を上げている系統が代表的である。

ただ、ダート向きの血統が強いといっても、
中山芝1200mはダートではない(当たり前だが)。
だから、ダートでしか走れないような
超パワー型の種牡馬の産駒ではさすがに苦しい。
芝でも活躍馬を出しているような種牡馬が狙い目だ。

では、中山芝1200mではなぜダート血統が強いのか。
この問いに対する答えには、
土方氏の言葉を引用することにしよう。

中山芝1200mの狙い目について土方氏は、

・距離は1200だが、平坦1200よりも粘り強さが求められる。
1300ぐらいのイメージで!
・人気も穴も内枠ほど狙いやすい。
・外に人気馬が揃っていれば、チャンス倍増!

と語っている。

すこし前に書かれた著作からの引用ではあるが、
この傾向は現在も大きく変わってはいないように思う。

血統との関わりで注目すべきは、
いちばん上の
「平坦1200よりも粘り強さが求められる」
という部分。
このコースでは、
芝向きの軽快なスピードや瞬発力ではなく、
先行して頑張り抜くような粘り強さが求められることを
土方氏は指摘しているのである。

そして、
先行して頑張り抜くような粘り強さという特徴は、
ダート戦で求められる資質にも共通する。
ダート向きの血統が好成績を収めるのも当然だろう。

ただ、ひとつ考慮しなくてはならないのが、
9月中山の芝コースが
年間でもっとも時計が出る状態であること。
先週の京王杯AHの勝ち時計(1分32秒1)を見てもわかるように、
かなりの高速馬場となっている。

こういう馬場状態で行われる中山芝1200mであれば、
軽快なスピード馬を狙いたい。
スピード系種牡馬の代表格といえばサクラバクシンオーで、
産駒は中山芝1200mでは凡走するケースが多いのだが、
今の馬場に限っては例外となる。

2007年以降のデータでは、
勝率がわずかに3.5%、複勝率も17.4%どまり。
回収率を見ても、
単勝が21%、複勝が61%となっている。
漫然とバクシンオー産駒を買っていては
大きく損をしてしまう数字だ。

先に書いたように、
中山芝1200mでは軽快なスピードではなく
粘り強さが求められるので、
スピードを武器にするバクシンオー産駒には
あまり向かないコースなのだ。

ところが、
先週行われた中山芝1200mの2レースは、
ともにサクラバクシンオー産駒が勝利。
高速馬場のスピード比べになれば、やはり強い。
そして、開催2週目の今週も、
先週に近いコンディションになるだろう。

こうした観点を踏まえたうえで、
今週の予想を組み立てていきたい。

まず、第9RのカンナSで目についたのが
ノーワンエルスだった。
前走の函館2歳Sでは大きく出遅れながら、
猛然と追い込んで0秒6差の6着。
ちゃんと走れば重賞級だろう。

函館2歳Sで単勝を買った身としては、
この馬でリベンジしたいところではあるが、
「今回はちゃんと出てくれる」
ではなく、
「今回も出遅れる危険性がある」
と考えるべきだと思うので買いづらい。

単純にサクラバクシンオー産駒の
ダイワナイトでもいいのだが、
やはりここは持ち時計を重視したい。
芝1200mの持ち時計が最速、
過去3戦がすべて芝1200mで
いずれも1分8秒台で走破している安定性も買って、
スギノブロッサムを狙うことにした。

メインのセプテンバーSも芝1200m戦。
人気にはなりそうだが素直にショウナンカザンを信頼した。
持ち時計は3位タイだが、芝でのキャリアが浅く、
時計を詰めてくる余地は十分にある。
父のショウナンカンプは
言うまでもなくサクラバクシンオーの代表産駒。
そのスピードと先行力をしっかりと受け継いだ
この馬に期待だ。

自分では予想しないほうが、当たるのでは…
出川塁(でがわ・るい)

1977年熊本県生まれ。出版社2社で競馬専門誌、競馬書籍の編集に携わり、2007年からフリーライターに。『競馬最強の法則』『サラブレ』を中心に寄稿。得意ジャンルはデータ解析。メインとする競馬のほか、サッカーでも活動中。

バックナンバー