第11回 「勝負の怖さを素通りする人たち」

知れば知るほど強くなる
勝負の世界の恐怖感を素通りしているかのような
あの騎手と、あのプロゴルファーの話。

西川    

アンカツさんは、もう大ベテランだけど、
ゴルフで言うと、ちょっとキャラクターは違うけど、
あの前向きさ加減は、
石川遼君に近いものはあるかもしれませんね。
技術的に、石川遼君にかなわないプロなんていないんです。
彼よりもドライバーを飛ばすプロなんていくらでもいるし、
アイアンだって、うまい人はいっぱいいる。
すべてにおいて必ずしも最高ではないんですよ。
評論家でも、最初は
「将来的にはともかく、
まだ高校生だから、そんなに勝てるわけない」
っていう意見が多かったんですよね。
ところが、それを、
ことごとく覆してきているでしょ?
海外のメジャーに行って、
難しいコースでもある程度の結果を出して
賞金ランクも今のところトップです。
その評価とか常識みたいなものをすべて覆す。
もうそれ自体が、
彼のすごさだと思うんです。
何があっても、どんな状況でも
常に前向きという、ね。

          
松永遼君は、
若いから、怖さを知らない、
っていうことはないんですか?
四位競馬でもゴルフでも、
長年同じ競技をやっていくと、
若い頃にはわからなかったこととか、
勝負に対する怖さというのがわかってきますよね。
西川もちろん遼君の原動力のひとつは
若さなんでしょうけど、
だからといって、他の若い子が、
彼みたいなことをできるかといったら、
それができないんですよね。
松永壁に当たってないから、ですかね。
西川まあ、そういうのもあるかもしれませんね。
四位競馬でいえば、三浦皇成君みたいな感じでしょう。
いまは、すごくいい感じでいってるけど、
キャリアを重ねていくと、知識も増えていくし、
それに比例して、
怖さみたいなものを
彼も感じるようになってくるんじゃないですかね。
          
―― 知識が増えたせいで失敗するということはあるんですか?
四位プレッシャーの掛かり方は違ってきますよね。
勝負の怖さは、
やればやるほどわかってくると思います。
西川そういう意味では、
アンカツさんは、もうそれを通り越して
一段上の世界にいるのかもしれないね。
 

(明日の最終回へつづく)