馬名ミュージアム カタカナで9文字以内アルファベットで18文字以内と定められている競走馬たちの名前。この短い言葉のなかにその馬に関わる人々の希望や祈り、そして、いにしえのホースマンが紡いできた物語を感じとることができるのです。

第19回 大物バンドと仏語で繫がる気鋭種牡馬の一流産駒たち

一昔前であれば、ファーストサマーデイ(加オークス)、
トウカイローマン(オークス)、マックスビューティ(オークス、桜花賞)、
オグリローマン(桜花賞)と、内外で4頭の牝馬クラシック馬を
送り出したブレイヴェストローマン、
最近であれば、シーザリオ、ブエナビスタという
2頭の歴史的名牝を輩出したスペシャルウィークなど、
大物産駒が牝馬に片寄る種牡馬たちがいます。

一方、活躍産駒は圧倒的に牡馬が目立つというタイプもいます。
サクラチヨノオー(ダービー)、ホリスキー(菊花賞)、
レオダーバン(菊花賞)、スズカコバン(宝塚記念)と、
大レース勝ち馬が牡駒ばかりという、
1980年代の大種牡馬マルゼンスキーが、その典型ですが、
現役種牡馬にも、ひょっとしたら “マルゼンスキー2世” かなと、
思える新進気鋭がいるのです。
皐月賞をアンライバルド、ダービーをロジユニヴァースが制し、
昨年の牡馬クラシック戦線を席巻した
ネオユニヴァース(Neo Universe)が、その種牡馬。
2010年3月中旬現在、
牝駒の重賞勝ち馬は一頭もいないネオユニヴァースですが、
今年の牡馬クラシック戦線においても、ヴィクトワールピサ(弥生賞)、
ネオヴァンドーム(きさらぎ賞)と、2頭の有力候補を擁しています。

さて、ネオユニヴァースの大物牡駒たちは、
なかなかにユニークな馬名の持ち主でもあります。
「ライヴァルなど存在しない」 という、超一流競走馬に相応しい、
自信満々の馬名を持つアンライバルド(Unrivaled)。
冠名の 「ピサ」 の前に、
仏語で 「勝利」 を意味するヴィクトワール(Victoire )が付いた、
ヴィクトワールピサ。
父の 「ネオ」(語源はギリシャ語で “新しい” の意味) に、
皇帝ナポレオンが戦勝記念に建設したコラム(円柱) があることで有名な、
パリ1区の “ヴァンドーム(Vandome)広場” の名を付け加えた
ネオヴァンドームなどは、
日本競馬界に新風を吹き込む、素敵で個性的な馬名と言えるでしょう。

ヴィクトワールピサやネオヴァンドームのように、
ネオユニヴァース産駒には、
フランス絡みの馬名が多いのも特徴となっています。
ネオユニヴァースは、英語表記による馬名、
また、父サンデーサイレンスはアメリカ産馬、
母ポインテッドパスはアイルランド産馬で、
血統的に見ても、ネオユニヴァースと仏を結びつける要素は
全くないのにも関わらず、です。
考えられる要因としては、ネオユニヴァースという馬名が、
人気ロックバンド、ラルクアンシエル(L’Arc~en~Ciel)の同名ヒット曲に
由来しているという説です。
“ラルクアンシエル” は、フランス語で 「虹」 の意味。
まあ、華奢で幻想的なルックス&曲調を売りにしている、“ラルク” と、
大柄でパワフルな馬体を誇り、
競走では、誰の目からも理解しやすいゴール前での瞬発力を武器とする
ネオユニヴァースの大物牡駒たちは、
イメージ的に、かなり相反する存在という気もするのですが・・・。

(次回は3月31日の水曜日にお届けします)  構成・文/関口隆哉