馬名ミュージアム カタカナで9文字以内アルファベットで18文字以内と定められている競走馬たちの名前。この短い言葉のなかにその馬に関わる人々の希望や祈り、そして、いにしえのホースマンが紡いできた物語を感じとることができるのです。

第12回 2000年代最強馬の兄はカリブの大海賊!?

昨2009年に英ダービー、凱旋門賞などG1を6連勝し、
「2000年代最強馬」とも称されるシーザスターズ(Sea the Stars)。
そのシーザスターズの母が、
競走馬時代に凱旋門賞を制した一流競走馬にして、
歴史的な名繁殖牝馬でもあるアーバンシー(Urban Sea)です。

アーバンシー産駒には、シーザスターズ以外にも、
英ダービー、愛ダービー、
Kジョージ6世&QエリザベスS勝ちの名馬ガリレオ(Galileo)、
愛と伊でG1勝ちを飾ったブラックサムベラミー(Black Sam Bellamy)、
米G1ダイアナS勝ちのマイタイフーン(My Typhoon)、
愛G3を制したアーバンオーシャン(Urban Osean)
といった重賞勝ち馬たちがいます。

上記の産駒たちは、母の馬に倣い、
すべて海に因んだ馬名が付けられています。
“Sea” や “Osean” 、あるいは海上で発生する “Typhoon” (台風)は
分かりやすいかと思いますが、
ちょっと首を捻ってしまうのが、
ガリレオとブラックサムベラミーの2頭。

まずガリレオは、16世紀から17世紀にかけて大活躍した、
物理学者、天文学者、そして哲学者でもある
イタリアの天才ガリレオ・ガリレイ(Galileo Galilei)から
名付けられています。
自家製の天体望遠鏡を作り上げたガリレオは、
月面をみて、クレーターや「月の海」と呼ばれる部分を発見したのです。

そしてブラックサムベラミーは、
18世紀初頭に西インド諸島や北米沖で暴れまくった海賊の名。
自由を愛し、人殺しは好まなかったと言われる
サム(サミュエル)・ベラミーは、
なかなかに魅力的な佇まいを持った海賊だったようです。
大人気マンガ 『One Piece』 に登場する “ハイエナのベラミー” は、
実在のサム・ベラミーをモデルとしているとのこと。
ただし、こちらのベラミーは、セコい悪人として描かれています。

(次回は2月10日の水曜日にお届けします)  構成・文/関口隆哉