合田直弘氏インタビュー 海の向こうの競馬4 そしてホースマン

アメリカ競馬の祭典であり、1年の総決算でもある第26回ブリーダーズC・ワールドサラブレッドチャンピオンシップが、現地時間11月6、7日の2日間に渡り、米カリフォルニア州サンタアニタパーク競馬場で開催されます。
第1回
オールウェザーコースを嫌った米3歳女王

現地時間11月6、7日の両日に渡り開催される、
アメリカ競馬最大の祭典、ブリーダーズC。
創設26年目を迎える今年の舞台は、昨年に引き続き西海岸の名門、
サンタアニタパーク競馬場となります。

まずは、サンタアニタパーク競馬場の特徴を、
合田さんに伺ってみました。



「なんと言っても有名なのが、
  直線入り口でオールウェザーコースを横切る形となっている
  ヒルサイドターフコースです」

「かつて、日本から遠征したシンボリルドルフも、
  ダートコース(当時)を横切る地点で故障を発症したと言われましたが、
  向こう正面から続く下り坂をスピードに乗って走り、
  急カーブを回ったところが、オールウェザーコースになっている。
  慣れていないと人馬ともに苦戦する、
  トリッキーな芝コースであることは間違いないですね。
  芝はヨーロッパのように深くありませんから、
  良馬場なら、時計の速い決着となるはずです」

従来のダートコースがオールウェザーコースに替わったのは、2007年の秋。
このコースも、個性的なものだと合田さんは指摘します。

「プロライドと呼ばれる、ちょっと珍しい素材が使われています。
  これは、オールウェザーコース全般に当てはまる傾向ではあるのですが、
  サンタアニタパークも、直線での追い込みが決まりやすい。
  ダートコースで行われる大レースというと、
  スタート直後から前に行った馬たちが繰り広げる、
  激烈なサバイバルレースという印象が強いですが、
  それとは、だいぶ違う競馬が見られると思いますよ」

米の有力馬のなかには、オールウェザーコースを嫌って、
ブリーダーズCクラシックへの参戦を回避したものもいます。
G1・5連勝中の3歳女王レイチェルアレクサンドラです。

「レイチェルアレクサンドラのオーナーサイドから、
  “プラスティックの上で競馬はできない” というコメントが出ました。
  “プラスティック=Plastic” という単語は、
  “セコい” とか “チャチな” といったニュアンスが含まれていて、
  あまり公式の場では使わない言葉なのですが…(笑)」

「いずれにしても、オールウェザーコースの適性は、
  一頭一頭かなり違うものであることは確かです。
  昨年のブリーダーズCクラシックで
  大本命に推されながら4着に敗れたカーリンのように、
  ダート戦で素晴らしい強さを誇っていても、
  オールウェザーコースへの適性が不足していて苦杯を舐めるケースも、
  十分に考えられるわけですね」

(明日更新の第2回に続く)

構成・文/関口隆哉




1959年東京生まれ。慶應中学時代から馬術部に所属するかたわら、千葉新田牧場で「乗り役」としてのアルバイトをこなす。慶應大学経済学部卒業後、1982年テレビ東京に入社。『土曜競馬中継』の制作に携る。1988年テレビ東京を退職し、内外の競馬に関する数多くの業務をこなす(有)リージェントの設立に参加。
現在は、『世界の競馬』(NHK-BS)、『鈴木淑子のレーシングワールド』(グリーンチャンネル)などのキャスターも務めている。